日本人の上司の言葉を通訳していた時にそれは起きた。
「WHY?!」
声を荒らげると同時に、通訳の私に頼らず慣れない英語で現地スタッフを怒鳴る上司。
この瞬間、私は思った。
「やってしまったー!!」
なぜならフィリピン人にとって人前で怒られることは大恥だからです。注意するときは必ず個室に呼んで話しをするのが基本。そうしないと恥のあまり次の日に仕事に来なくなる可能性が高いから。
そして最悪の場合、
恨みを持たれてしまいます...。
ベテランの駐在員はこのことを知っていましたが、私の上司はフィリピンに赴任してばかりで知らなかったようです。心配して怒られた現地スタッフの方を見ると...
目に涙が浮かべていた。
ヤバイ、と思った私はすぐに怒られた現地スタッフを呼んで誰もいない場所で必死にフォローしました。
駐在員が怒ったのは君に期待して成長してほしいからだよ。話を聞いた現地スタッフは「大丈夫です」と笑顔で返事してくれた。
本当に大丈夫かな...?と心配していると、翌日。
その子は会社に来ませんでした...。
この事態に私は焦りました。昨日話した感じでは恨みを持った様子はなかった。
が、その代わり永遠に会社に来ない可能性があったからです。
その子が来てないことに気づいた上司に私は「人前で叱ってはいけない」ことについて説明しました。
「でも注意しないといけない時はあるだろう?」と、しばらくマネージメントについて議論?を交わすことに。そして最後に上司はこう言ってくれました。
「わかった。じゃあ、俺が怒りそうでダメな言葉を使いそうな時に教えて止めてくれ」
理解力がある人で助かった。
駐在員と現地採用の差別問題の話を海外就職する前に耳にしていたが、フィリピンに就職してからそんな目にあいませんでした。それどころか私の上司も含めた駐在員たちは同等に扱ってくれました。
(同時に仕事のプレッシャーもすごかったですけどね...。)
話を戻すと、上司が注意の方法について納得してくれたのは良かったですが...休んでいるスタッフがちゃんと戻ってくれるか心配でした。
このまま会社を辞めたらどうしょう...。
心配してむかえた翌日。
笑顔で席に着くあのスタッフの姿が。
「来てくれてありがとうー!えらい!」
と叫びたくなる気持ちをがまんしていつも通りあいさつした。返事をしたその子の顔は太陽のようにまぶしかったのをよく覚えています。
もう大丈夫...。上司も「人前で怒ってはいけないと分かってくれたし。あとは私が気を付けて間に入れば問題はない」安心した私は仕事に戻りました。
......その後、会議中に気持ちが高ぶったベテランの駐在員が大声をあげてしまい、次の日にスタッフが来なくなることが何度か起きてしまうのでした...。