「面接をやるから君も早く来なさい」
突然の指令を私はすぐに理解できなかった。
このとき私はフィリピン現地採用としてある日系企業で働いてました。
そして私がいる部署の新しい現地スタッフの採用活動が行われていたのですが、
進行調整や通訳などが主な仕事である私がなぜ面接に?
私「あの…どうして私も面接に出ないといけないんでしょうか?」
上司「それは君も責任者の一人だからだろう?」
あれ...
私って、
いつそんなに偉くなったけ?
確かに会社では管理職扱いになっていたけど、
面接をする立場ではないような...。
と考え込みながらも「ほら、行くぞ」と呼ぶ上司に従って面接室へ行ったのはいいですが…。
面接官は上司を含めて10年以上も会社にいたベテラン3人と、
会社に入って数ヶ月の新人の私。
明らかに一人だけ完全に浮いていました。
さらに一つ、ある問題がありました。
それは…
かつての職場の上司から
「笑わない人かと思ってたよ!」
という称号を与えられるほど、私のコミュ力がお世辞にも高くないということ。
そんなコミュ力ゼロの私が、不覚にも会社と応募者の運命を大きく左右する面接官になってしまったのです。
不安を抱えながらも始まる面接。
英語が得意ではない上司と現地の応募者の通訳に集中することで、何とか面接を切り抜けようとしました。
だが、数分後。
上司「君も何か質問しなよ」
私「えっ、いえいえ!私は通訳が仕事なので」
上司「何を言ってるんだ。君も責任者の一人として質問しないと」
...もはや逃げ場はありません。
(そしていつ出世したんだろう?)
視線が私に集中する中、思い切って目の前の応募者に聞きました。
「あなたの特技を教えてくれませんか?」
恐らく面接でよく聞かれる質問の一つ「特技」について聞くことで乗り越え、
始めての「面接官」としての面接が無事に終わった。
ホッとした私は部屋から出ようとした時でした。
上司「次の応募者が来るから続けてやるぞ」
私「ええ?!まだ面接があるんですか?!」
衝撃を受ける私に上司からさらなる指示が飛んでくる。
上司「他に急ぎの仕事があるから、オレ達が戻るまで一人で面接を進めてくれ」
私「一人で面接をですか?!」
上司「そうだ。よろしくな」
私を置いて出ていくベテラン3人。そして入れ替わるように部屋に入ってくる新たな応募者。
こうして...
コミュ力ゼロの面接官一人と緊張ぎみの応募者の二人きりに。
...どうしょう…どうやって始めればいいの...。
いきなり一人ぼっちでの面接に頭は半分パニック状態に。
油断すると、
どうしていいか分からない面接官が応募者の前で涙を流すという前代未聞の事件になりかねない。
落ち着け...落ち着け私...!
自分に何度もそう言い聞かせながら、まずはお互いの緊張をほぐすために応募者と雑談をすることにしました。
そして気持ちが落ち着いてきたところで、次に応募者の履歴書を見ながら
『志望動機』
『今までの経験』
についての簡単な質問をしました。
そうしている内にベテラン3人が戻ってきて、私の話を聞いてから一緒に面接を進めるのでした...。
このように、
「入って間もない新人」
「経験・知識不足」
「人を見抜くプロではない」
人が面接官をやることもあります。
正直、もしこの時に一人で十数年もの経験を持つ応募者の面接対応を指示されたら、
経験不足でコミュ力ゼロの私は「どんなスキル・経験・知識」などが必要かわからず『印象』だけで合否の判断を下してしまうでしょう...。
そのため、もし面接で不合格になってもどうか落ち込まないでください。
たまたま面接官が面接経験が少ない・人を見るプロではなかった可能性があるからです。