緊張のあまり、涙目になる一人の真面目でおとなしそうな応募者の女性。
新たな現地スタッフのに面接やってきた彼女を見て、面接が始まる前から早くも厳しい顔を浮かべる上司と人事部。
しかし。
数人いる面接官の内の一人であった私は目の前にいる彼女が気になって仕方がありませんでした。
なぜなら、彼女は昔の「本当の私」と同じだったから。
今まで面接を受けた時、私は笑顔で明るく話すようにしてきました。
でも、本当は心の中では不安でいっぱいでした。
「変なこと言ってないよね…?」
「失敗したらどうしょう…」
そんなことばかり考えたせいか。
面接が終わった後の日は倒れて動かなくなることもありました。
何度も面接を経験したおかげでだいぶ慣れてきたとはいえ、
緊張と戦っている応募者ー涙目の子の気持ちが痛いほどわかりました。
そしていよいよ始まる面接。
上司と人事部が質問に涙目の子はがんばって答えるものの…、
あがり症でもあるらしく、明らかにうまく回答が出来ませんでした。
焦って挽回しょうとする涙目の子。
けれど、早口になってしまい、言いたいことがさらに分からなくなるという負のスパイラルに...。
次第に声が小さくなっていく涙目の子。
「やっぱりダメだな…」
と険しい表情を見せる上司と人事部。
重くなっていく空気を少しでも晴らそうと、
私は「得意なことは何ですか?」と涙目の子に質問しました。
少しでも緊張がほぐれて、
さらにアピールするチャンスにと思って聞いたのですが、
すっかり自信を失った涙目の子はか細い声で答えたのでした...。
最後はさらに泣きそうになるのを必死に我慢しながら、
面接のお礼を言って涙目の子は帰っていきました。
結果は『不合格』
「みんな賛成よね?」
と厳しい目で聞く人事部と迷わず同意する上司に私は何も言えませんでした...。
あれからしばらくして、知人に涙目の子との面接について話しました。
すると、
知人「なんてもったいないことをしたんだ!なぜその子を落としたんだ?!」
えっ、と驚く私に知人は続けて話した。
知人「あんなに人と話すのが苦手なのにわざわざ面接まで来てくれたんだろう?つまり、それだけやる気と向上心があるという証拠じゃないか。ちなみにその子の経歴は?」
私「経歴は…」
応募した仕事に関連する知識と資格を持っていた涙目の子。
そのことを伝えると知人は「思った通りだ」と目を光らせた。
知人「つまり、条件は満たしているのに人と話すのが苦手という理由だけでその子は落ちたということだろう?
確かにどんな仕事でも人と関わらないといけないから会話能力は大事だ。でも、だからっていい素質を持った人を話が出来ないという理由だけで落とすのはもったいなさすぎる」
一通り話した後、知人は最後にこう言った。
知人「人との会話に慣れていないタイプは小さな成功体験をさせてあげれば伸びていくはず…。本当にもったいない…私だったらその子を採用したのに」
知人との会話の後、私は思った。
面接でたとえ上手に話が出来なくっても、『縁』があれば採用されるのだと。
もし、涙目の子が知人と出会っていれば…。
そう考えずにはいられませんでした。
面接でうまく話ができず、悩んでいる人がいましたらこう伝えたいです。
面接は『縁』と『タイミング』です。
もし面接で落ちても、不合格になって良かったところかもしれません。
実際に会社の労働時間がブラック化した後。
応募してきた人達を『とりあえず採用してみょう』
というほぼ誰でもいいという状態に…。
会社が後にこんな状況になったことを考えると、
あの時の面接で涙目の子が落ちて良かったと思います。
このように、会社の状況によって面接の合格・不合格の基準は大きく変わります。
そのため、もし面接で話がうまく出来ず失敗しても自分を責めないでください。
そして面接に行った自分をほめてください。
面接に行っただけでもあなたは十分がんばりました。
失敗点を反省するのはもちろん大切ですが、がんばった自分をぜひほめてあげてください。