海外就職先の労働時間がブラック化した後にそれは起きました。
一人の駐在員、Aさんが手術のために日本に緊急帰国することに。
「大丈夫かな?」と心配していたら1週間後。手術が無事に成功したAさんがフィリピンに戻って来ました。
正直、あまり顔色が良くないAさんに私は「もう会社に戻って大丈夫ですか?」と聞きました。すると、
Aさん「...本当は大丈夫じゃないんだよね。医者からは1ヶ月の休みが必要って言われてるし」
私「えっ!お医者さんからそう言われたなら本社にお願いして休んだ方がいいじゃないですか?!」
Aさん「そうだね...でも仕事を休むわけにはいかないから。心配してくれてありがとうね」
笑顔を見せながらAさんはこう答えるのでした...。
その後、心配した一人の人事担当の現地スタッフがAさんに休むように説得しょうとしているのを見かけました。
「あなたには休みが必要です!体が壊れたら意味がありません」
しかし。その言葉に対してAさんは、
「そう言ってくれてありがとう。でも、仕事をしないといけないから」
休むことを強く拒否し続けました。
この出来事からしばらくして、私は会社のある”暗黙の常識”に気づきました。その”暗黙な常識”は『体が壊れても休まないのが普通』というものでした。
そのことについて知ったのは、ほとんど休まず働く駐在員達と現地採用の先輩のことが気になって人事に聞いたのきっかけです。
人事から駐在員達が「入院は長くってもほとんど1週間だけ。長期の入院が必要でも無理に出社する」ことを教えてもらったのです。
(駐在員と現地採用の先輩も休まない話についてはこちら)
この話を聞いて私は『おかしい!』と思ってしまいました。もしかしたらこの考えは社会人として甘いかもしれません。
でも...
体がボロボロになっても仕事を続けたら、いつか倒れてよけい取返しのつかないことになるのでは?
気になった私は駐在員達に思い切って聞いてみました。
「大丈夫ですか?休んだ方がいいんじゃないでしょうか?」
これに対して駐在員達はこう返しました。
「確かにな…でも休むわけにはいかないんだ。それに、こんなこと普通だし」
普通...?
入院が必要な体でも、仕事の手を止めないのは普通...?
だから体がボロボロでも仕事をすることを何とも思わないということ?
この言葉を聞いて私はしばらく考え込みました。
思えば会社員になってから、高熱が出ても重要な会議や出張などがある時は無理して出社したことが何度かありました。
でも、本当は調子が悪いとき体が治るまで休みたいのが私の本音です。
いつか体調不良のときは誰もが気軽に休める世の中になればいいな、といつも思っていました。
でも...
駐在員達の話を聞いてそう簡単にはなくならないことを知りました。
彼らにとって「体がボロボロになっても仕事を休まないのは普通」が常識だから。
そんな「常識」を持っていた駐在員達でしたが、決して新人現地採用の私や現地スタッフにそのことを押し付けることはありませんでした。
むしろ体調が悪そうなスタッフがいたら積極的に休むよう促したり、時には病院にも連れて行ったりと気を遣っていました。
『休まないのが当たり前』という常識を持ちながら、スタッフ達の健康を心配する駐在員達...。
「体に不調があるときは休んで回復するまで待つのが当たり前」
そんな世界が早く来るのを願わずにいられませんでした...。