持ち帰っても終わらない仕事。誰もが疲れ切ってピリピリとした職場。仲良かった現地スタッフ達の退職。泣きながら毎晩持ち帰った仕事をこなす日々。
日本でよく取り上げられる長時間労働の牙が確実に身をボロボロにしてきた...。
海外就職する前の予想をはるかに超えた辛い現実...。
このままでは潰れてしまう。
そう思った私はある日、気持ちを変えようと持ち帰り残業をする手を止めて10分だけでも本を読むことにした。趣味の読書をすれば気分転換になる。
そう考えたが...。
本を見つめて数秒後。
なぜか文字が頭に入らない。
いつもなら文字が生み出す場面を想像できるが、それもできない。
どんなに頑張っても本に書かれている話がただの”文字”にしか見えなかった。
私は...本を読めなくなっていた...。
その日から趣味だった読書は苦痛になってしまい、
本を読まなくなりました...。
趣味すら楽しめなくなった私のストレスは溜まる一方。
あまりの辛さに耐え切れず日本の家族に毎日電話をするようになった。
しかし。
感情をコントロールできなくなった私の毎晩泣きながらの電話に家族も当然ながら疲れるように。そしてとうとう、
「海外で働くと決めたのはあなたでしょう?!しっかりしなさい!」
と叱られてしまいました...。
この瞬間、家族に大迷惑をかけていたことに気づいた私はますます自分をいやになった。
せっかく海外就職したのに...私は...なにやってんだろう?
仕事ができない...。
上司や先輩にいつも迷惑かけてばかり...。
そして家族にも迷惑を...。
しっかりしなきゃ。
頼れるのは自分だけ。
しっかりしなければ!
そう考えて何とか自分を立て直そうとしたが、これが良くなかった。
むしろこの考えのせいで私は
自分をさらに追いつめてしまったのです。
そのせいで一人で部屋にいるときに過呼吸を起こすようになってしまう。
息しょうとしてもなくならない胸の苦しみ。
死なないと分かっても、息苦しさのあまりに倒れてしまうのではと本気で思いました。
自分の精神も限界を迎えているのを感じながらも職場ではそれを見せまいと明るく振舞うようにした。
しかし。
やつれて顔色が悪かったらしい私の異変に気づいた職場の上司と先輩が声をかけてくれたのでした。自分達の仕事で大変にも関わらず、上司と先輩達はこう聞いてくれました。
「大丈夫?ちゃんと食べてる/寝てる?」
心配して見つめてくる上司と先輩達。
けれど、私は言ってしまったのです。
「大丈夫です」
本当は大丈夫じゃない…。
もう限界です。
泣きながら叫びたい本心を殺して私は「大丈夫です」と答えてしまいました。
あの時、勇気を出して「もう限界です」と素直に言ったらどうなっただろう?
長時間労働で限界を迎えていた職場で社員の何人かが現状の改善を訴えても、無理だと返されて変わらない体制。
あの状況の中「もう限界です」と叫んだら何か変わったのでしょうか?
今となってはわかりません...。
ただ一つはっきりしたことはある。
この言葉で自分自身をさらに追いつめてしまったということを...。
つづく
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